• [2019年10月19日〜12月7日・全4回 開催] 旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業終 了

    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業チラシ表
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業チラシ裏

    1回目 講座の様子

    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業01
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業02
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業03
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業04

    1回目 概要

    古民家改修の考え方

    2019年10月19日14:00
    廣谷昭 氏(株式会社A&Aリフォーム 代表取締役)

    1.はじめに

    今日来ていただいた 私が建築会社に入社した時からお世話になっている横川畳店社長の横川さんと 長年多くの現場で職人として棟梁として友人として多くの困難な仕事で協力してくれた榎本さんを紹介します。
    私のような現場監督が何人集まっても優秀な設計技術者が何人いても畳一枚作ることができないし、物置一つも作ることは出来ません。この寿原邸も皆さんが住んでいる家も職人さんの技術の集まりで出来ています。
    今日は、普段 職人さんに聞けないことを何でもいいから質問してみてください。

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    2.専門家改修とDIY

    由緒ある古民家建築には様々な高級素材やサイズ、そして専門技術が使用されている場合があります。特に和風建築には宮大工などの専門技術が多く施されています。あくまでも由緒を大切にするなら、こういう部位をDIYで行うのは危険です。
    この講座は専門家の指導を前提に、DIYでも大丈夫な部位を改修体験するものです。

    3.改修工事を計画するとき

    ①図面と予算

    何処を改修したいのかを業者に伝え見積もりをしてもらう。(通常 見積もり料金は、無料です。)
    建物の図面が無く、全体調査に多くの時間や人数が必要な場合・図面の作成が必要になる場合は、費用が掛かる場合があるので、事前に業者に有料になるのか、どれくらいの費用がかかるかを相談してください。改修工事のトラブルの原因は、ほとんど確認不足による金銭問題です。
    多くの場合 皆さんが夢を追って改修工事を計画すると、予算の2倍なる事がたくさんあります。改修資金が500万円ある場合は、業者に350~400万円でお願いしたいと伝えてください。90%以上の改修工事で20%以上予算オーバーになっています。
    予算も100万円以内でお願いします。500万円以内でお願いしますとちゃんと伝えてください。建築会社・工務店は、その予算でどこまで出来るか検討します。
    見積もりをしてもらった場合、この他に別途工事が発生するのか 清掃・ごみの処分費・電気・給排水設備の変更が必要ないのか、その費用が含まれているのか等の確認が必要です。消費税を含んでいるのかも確認してください。

    ②改修箇所と改修後の希望確認

    何処をどのように改修・修繕したいのかをきちっと業者に説明することが重要です。
    特に家のことを一番知っている奥様が満足できる改修工事をすることが、お客様の満足度につながりますので、ご家族で十分に何をどうしたいかを話し合ってください。
    給排水設備・排水の流れが悪い・ボイラー・ストーブ・の調子が悪い等、水に関する問題。内装が古くなったので奇麗にしたい。台所・トイレ・浴室が古いので改修したい。
    寒いので断熱改修工事をしたい。雨漏りが心配なので屋根を改修したい。外壁が古くなったので改修したい。いろいろな改修を必要とする工事があります。
    その工事内容は、一軒一軒違いますので一概に改修工事の予算はこれくらいと概算は出来ません。

    ③費用対効果の問題

    この家に何年住み続けるのか、子供がこの家に戻ってくるのかで費用のかけ方が大きく変わります。あと何年かで手放す場合は、必要最低限の改修工事にするべきです。
    寒いからと言って断熱工事をしても、外壁を新しくしても工事価格は、それほど高くはなりません。毎年3~5万円ほど灯油やガス料金が多くかかっても長く住まないのなら改修工事をする必要ないと思われます。

    ④屋根を改修したい場合

    〇 季節に関係なく雨が降ると雨漏りがする場合、板金の張替が必要です。無落雪屋根の場合は、既存鉄板の撤去費・処分費・板金工事等 外部足場が必要でない場合がほとんどです。無落雪屋根以外の場合は、外部足場の費用が必要になるのがほとんどです。
    〇 冬になると部分的に雨漏りがする 結露・すがもり・除雪・軒先の氷の撤去で解決する場合があります。ほとんどが2階天井部分の断熱性能が悪く小屋裏部分に暖かい空気が流れることによって起きます。改修は、既存板金を撤去し、断熱材を張り(スタイロフォーム等)板金工事を行います。水の洩りにくい防水性のある特殊な板金工事もありますが、費用は高額です。
    板金工事の場合、(その他の改修工事でも)業者によって見積価格が大きく変わることがあります。信頼できる業者を知っている場合は、問題ありませんが、一般的には何社かの見積もりの比較が必要です。

    ⑤火災保険

    今回皆様に是非知っておいていただきたいのが、火災保険の活用です。
    雪や雨・給排設備の故障で被害が生じた場合、火災保険の適用になる場合があります。また雨漏りによって被害を受けた家具・電化製品も対象になる場合があります。
    こんな事例がありました。
    ○ 排水口の詰まり
    無落雪屋根のルーフドレン(排水口)が、ゴミや落ち葉によって塞がり漏水し、1階も2階も水浸しになった家がありました。保険対象は以下の通りです。
    漏水によって被害を受けた内装材 壁のボード・クロス貼・フローリングの撤去費、および復旧費・濡れた断熱材の入れ替え費・電気器具・電気配線コンセント等の修繕費・濡れて使えなくなった家具の買い替え費用が対象となり200万円の保険が適用になりました。
    屋根からの落雪により車庫が壊れたり・バルコニーの手摺が壊れた場合も対象になる場合があります。隣の家に被害を与えた場合も対象になることがあります。業者に聞いたりインターネットで調べたりすると多くの情報が得られますので、ぜひ皆さんも勉強して下さい。
    保険を申請する場合は、被害状況写真・業者の修繕見積書が必要になります。但し経年劣化による漏水・すが洩りは、ほとんど対象になりません。水害が保険内容に入っていない場合がありますので、保険契約の内容をもう一度確認してください。

    3階床改修(和室畳部屋)

    2019年10月19日14:00
    廣谷昭 氏(株式会社A&Aリフォーム 代表取締役)
    榎本恒雄 氏(加藤建設有限会社 棟梁)

    ■ 畳とは  ※平凡社『世界大百科事典』、wikipedia

    古来からの日本固有の文化。日本住宅の床上に敷くもの。
    芯材になる板状の畳床(たたみどこ)の表面を、イグサを編み込んで出来た敷物状のものを畳表(たたみおもて)でくるんで作る。
    縁には畳表を止める為と装飾を兼ねて、畳縁(たたみべり)と呼ばれる帯状の布を縫い付けるが、一部には縁の無い畳もある。
    畳には縦横比が2:1になっている長方形の一畳サイズと、これを横半分にした正方形の半畳サイズの2種類がある。現代の基本は大きさは3尺×6尺。

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    ■ 畳の歴史

    ・『古事記』(712年)『万葉集』(奈良時代)では、菅畳、皮畳、絹畳、薦(こも)畳などの記録があるが、今日の茣蓙(ござ)のように薄かった。
    ・『延喜式(えんぎしき)』(平安時代)では、長帖、短帖、狭帖などがあり、身分によって長さが異なっていた。
    ・『類聚雑要抄(るいじゅうぞうようしょう)』(平安時代後期)では、今日と同じ厚さ。
    ・『海人藻介(あまのもくず)』(南北朝時代)では、身分によって縁の模様や質が異なっていた。
    ・室町時代には、小室が増えたことから敷き詰め型となり、部屋の大きさは畳の大きさで決められた。
    ・江戸時代には、一般民家の座敷でも厚床の畳を床一面に敷き詰めるようになった。

    ■ 畳の大きさ

    御所間:6.5尺
    京間 :6.3尺
    高野畳:6.6尺
    田舎間:5.8尺
    など

    ■ 畳の敷き方

    祝儀敷き:一般には畳の角が4つ重ならないようにする
    不祝儀敷き:寺などの事例

    畳下改修

    1.畳あげの段取り

    ①畳を移動する場所にシート・ダンボール等を敷き汚れないようにします。
    ②畳の上げ方を指導してもらい床下を修繕する部分の畳を移動します。
    ③畳を剥がし立てかけた畳裏に番号を付けます。
    ④畳を剥がした所に敷いてある新聞紙を片付けます。

    2.畳床の下構造

    ①畳を支えるための板が有ります。
    ②板を受けるための木下地があります。
    ③木下地を支えるための束・梁がります。

    3.改修箇所の状態

    ①床下の状態を確認するため床板を外します。
    ②床下の梁・束・床垂木に腐食・割れが有るか確認します。
    (今回の寿原邸の場合、畳下の板が固定されておらず、板がずれていたため畳が沈んでいました。床下は換気が良く木材にほとんど痛みが有りませんでしたので床下の木下地を取り換える作業が必要なくなりました。)

    4.改修方法

    ①ずれていた板を固定するため床板を正しい位置に並べます。
    ②床板を固定するため釘・ビスで固定します。
    ③床下の板が固い場合 釘・ビスを打つ前にドリルで穴をあけます。
      穴を開けないで釘・ビスで固定すると板が割れます。
    ⑤固定されたら新聞紙を敷きなおします。

    5.畳敷きの段取り

    ①移動していた畳を番号通りの位置に戻します。
    ②畳を敷いても床板の厚さが違うため敷居と畳に段差が出来る事が有ります。
      段差をなくするためにゴザの切れ端を畳の下に敷き高さを調整します。
      畳と畳の間にも段差が生じる場合が有るのでその部分もゴザで調整します。
    ③畳と敷居 畳と畳に段差がなくなり平らに敷き詰められたら作業完了です。

    2回目 講座の様子

    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業05
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業06
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業07
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業08

    2回目 概要

    障子張り替え

    2019年11月16日14:00
    山田満博 氏(山田表具店 店主)

    ■ 障子とは  ※平凡社世界大百科事典、wikipedia

    「障子(しょうじ)」の名称は中国伝来で、和風家屋に用いる建具の一種。古くは戸、衝立(ついたて)、屏風(びょうぶ)、襖(ふすま)などの総称だったが、現在では明かり障子に限定される。ちなみに障子の一種「襖」は唐にも韓にも無く、日本人の命名である。(臥す間)

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    ■ 明かり障子

    四囲(しい)を框(かまち 木枠)で組み、その内部を桟(さん 障子骨)で縦横に組んで、それに和紙をはって採光できるようにした建具。
    明かり障子が襖とともに日本住宅の主要な建具となったのは、和紙の普及により、強くて薄く、採光可能な紙が入手容易になったから。鎌倉時代に盛んに描かれた絵巻物には、明かり障子がしばしば描かれている。
    現在もなお日本住宅に障子が用いられているのは、光の透過率大で拡散力に富み、多少の通気性をもち、熱伝導率が小さく、居室の採光用建具として好適なため。

    ■ 障子の種類

    ①腰付(こしつき)障子:高さ35cm程度の板張り
    ②腰高(こしだか)障子:半分の高さまでの板張り
    ③額入(がくいり)障子:中央部に硝子をはめ込んだ
    ④堅繁(たてしげ)障子:垂直方向の桟の数が多い
    ⑤横繁(よこしげ)障子:水平方向の桟の数が多い

    ■ 障子紙

    奈良時代770年頃に播磨産(兵庫県)の障子紙を使用した記録が最古。1777年刊の『紙譜』では質の良さが美濃(岐阜県)、周防(山口県)、陸奥(福島県、宮城県、岩手県、青森県、秋田県の一部)、岩城(秋田県)、那須(栃木県)、広島の順で記されている。
    現在のコウゾを原料とした障子紙は信濃(長野県)、土佐(高知県)、美濃などが有名。

    ■ 障子紙の大きさ(1尺=30.3cm)

    半紙判:8寸2~3分×1尺1寸
    美濃判:9寸3分×1尺3寸3分
    長半紙:8寸4~5分×1尺5寸
    長障子:半紙判か美濃判の幅で長さ3尺内外
    巻障子:1本およそ障子4枚張 半紙判で長さ72尺 美濃判で62尺

    ■ 障子張り替え道具

    雑巾(ぞうきん)、障子紙(しょうじがみ)
    糊(のり):障子紙と桟との接着剤
    糊刷毛(のりばけ):糊を塗る道具
    糊皿(のりざら):糊を入れる器
    カッター:障子紙を裁断する道具
    パテ篦(ぱてへら):剥(は)がした後に付着した糊を削る道具
    篦(へら):障子紙を貼った後に隙間を整える道具
    霧吹き(きりふき):乾燥膨張効果をあげるための湿気道具

    ■ 障子張り替え作業手順具

    障子紙剥がし→桟清掃→桟乾燥→糊塗布→障子紙裁断→障子張り→仕上げ

    古民家清掃

    2019年11月16日14:00
    遠藤雅之 氏(協和総合管理株式会社 専務取締役、全国ビルメン 講師)

    はじめに

    古民家の清掃と言っても何か特別な作業方法があるわけではなく、その基本となるものは“掃く”“拭く”“洗う”など、家庭で日常行っているものとあまり変わりがありません。では、どのような点に注意して清掃を行えばいいのか古民家の特徴を考えていきましょう。

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    まず第一に挙げられるのは、古民家の魅力として自然素材である木材を多用していることです。昔から、木材は軽量で、加工しやすく、木目が美しいという長所を持っているため、造作・建具・床・壁・天井など多方面に用いられてきました。しかし、古民家の場合、現在の木造住宅と違い使われている木材は全て加工されていないという点です。加工されていない木材は、一般的に水に弱く、木材がいつも湿っていると反り・収縮・亀裂などを生じるので、必要以上に水を使わない注意が肝要です。
    第二に現在の木造住宅に比べ、作りが精巧であるため細かな汚れが取りにくいことも特徴です。したがって清掃の方法や作業周期、作業の時期などそれぞれの建物にあった計画を立てて実施しなければなりません。
    清掃作業に従事する者は、まずこれら“掃く”“拭く”“洗う”などの基本作業を正しく行うことを学び、さらに熟練することによって大切な建物を長期に渡って維持管理していくことができるのです。

    1.ほこりの取り方

    1)ほこりとは

    ほこりは、床や家具などの上に積もる粉状の付着物です。その大部分は、土ぼこりといわれている土壌の粉末と、綿ぼこりといわれている繊維類の細かくなったものですが、これにさまざまなものが少しずつ混じっています。
    ほこりは微細なものですから、風の衝撃を受けると舞い立って、空気中に浮遊する性質を持っています。
    ※この性質はほこりの除去方法を考えるうえで大切です。
    ほこりには、人間の健康に悪影響を与える恐れのあるものが含まれており、カビやダニの発生する原因にもなりますから、これを私たちの身のまわりから取り除くことは、清掃に課せられた大切な環境衛生上の任務です。

    2)ほこりの取り方のいろいろ

    現在行われているほこりの取り方には、次に述べるようないろいろな方法があります。清掃作業を行うときは、それぞれの場合に最も適した方法によって行わなければなりません。

     イ)はたき掛け

     “はたき掛け”は、舞い上がって空気中に浮遊するほこりの性質を利用してほこりを除去する方法です。風の吹き通るところでは、便利な方法ですから、日本では昔から家屋内の掃除方法として広く行われてきました。
    しかし、現在の建築物は空調を行う必要から締め切った構造になっていますから、はたきを使うと、舞い立ったほこりの大部分は再び建築物内のどこかに積もることなります。そのため、“はたき掛け”やこれに類似した清掃方法は、現在の建築物ではほとんど行われなくなっています。

     ロ)拭き取り

     タオルやモップの類にほこりを付着させて取る方法を“ほこりの拭き取り”といいます。ほこりを飛散させることがなく、微細なものまで除去することができるので、ほこりの取り方としてすぐれた方法です。

      a.から拭き

      乾いた布やモップでほこりを拭きとる方法を“から拭き”といいます。
      ほこりの粒子や細かいごみを繊維にからみ付かせて取るもので、ほこりが少量の場合に効果があり、家具や置物などの表面に付着した微細なほこりを除去するのに適します。

      b.しめり拭き

      タオルやモップの繊維に少量の水を含ませて、俗に“半渇き”といわれる状態にして拭くと、水のほこりを濡らす作用が媒介となってほこりがタオルやモップの繊維に付着し、しかも清掃対象を濡らすことがほとんどありません。
      しめり拭きはほこりの付着がよく、清掃対象のツヤが無くならないなど作業効果がよいうえに、使用も簡単なので、机の上や床の清掃方法として広く用いられています。

    2.よごれの取り方

    1)よごれとは、広い意味ではほこりなども含めて建築物に付着した異物を総称する言葉ですが、ここではすでに述べたごみ・ほこり以外の付着異物をよごれとしてまとめ、その除去の方法について学びたいと思います。

     イ)よごれのいろいろ

     よごれは、空気中の微細な浮遊物が付着したものと、人間の生活行為や活動に伴って付着したもの―たとえば、人体の分泌物、排泄物、飲食物、靴や衣服、事務資材などに由来するもの―が主だったものですが、ねずみ・ゴキブリ・クモなどの動物が付着させたもの、カビなどの発生によるものなどもあります。
     よごれの中には、床に付着したチューインガムの噛みかすのようなかさ高固着物や、カーペット床に付着したしみのような、部分的で特殊な性質のものもあります。

     ロ)よごれの性質

     よごれは建築物の美しさを損ない建材の耐久性を阻害しますが、一方では利用者に不快感を与えるだけでなく、人体に有害な物質や微生物を含んでいる場合があり、カビ・ダニなどの温床になる恐れがあるなど、建築物の衛生的環境に悪い影響を与えます。
     よごれは、ほこりが物の表面に軽く付着しているのとは違って、建材に強く付着しており、ときには粘着し、固着し、あるいは材質にしみついているので、これを除去するのはほこりの場合よりも遥かに困難です。
     しかし、よごれには水に溶けたり混じったりしやすいものが多いので、よごれのこの性質を利用して、水を媒体としてよごれを除去することが広く行われています。これを“洗浄”といいます。洗浄は“洗濯”やそのほかの工業分野でもよごれ除去の方法として広く用いられています

    3.洗浄とは

    1)洗浄は、建材の表面に付着しているよごれを水に溶かして、水といっしょに取り除く清掃方法です。

     イ)水の作用

     洗浄作業でよごれ除去の主役を演ずるものは「水」です。水は清掃面を濡らし、そこに付着しているよごれを溶解・分散する能力を持っていますから、よごれ除去の媒体として利用するのに都合のよい物質です。
     水は容易に得られるうえに、人体に無害であり、蒸発速度が適度で、熱や物理的な力を伝えることもできるなど、私たちがよごれの除去に利用するのに多くの利点があります。

     ロ)洗剤の動き

     水はこのように、よごれ除去の媒体としてすぐれた物質ですが、表面張力が強いために、油脂や蝋のような物質とはなじみにくく、これらの物質を濡らし、水に溶解・分解させることができません。
     このような水の欠点を補うものが洗剤です。洗剤は、水の中にきわめて少量存在するだけで水と油などとの仲立ちとなり、通常の状態では水になじまないよごれを水に溶解し、あるいは細かい粒子として水中に分散させます。洗剤を加えることによって、よごれ除去媒体としての水の作用は補われ、著しく強まります。
     私たちの身のまわりのよごれには油脂や蝋を含んだものが多いので、洗浄には多くの場合、洗剤が必用です。しかし、水のみで行う洗浄作業もあります。

     ハ)洗浄を促進する物理力

     よごれは建材に強く付着していますから、これを清掃対象から離脱させて、水に溶解・分散させるのには、”擦る、研る“というような物理的な「力」を加える必要が生じます。このような「力」が加わることによって、水や洗剤の動きは促進されます。
     洗濯では、このような「力」を加える手段として“叩き洗い”“揉み洗い”などを行いますが、建築物清掃では、床みがき機によるブラシ洗い・パット洗いをはじめ、デッキブラシ・たわし・スポンジなどによる摩擦・研磨が多く用いられます。

     ニ)汚れた水の処理

     洗浄の最後の段階は、汚れた水の処理です。この処理が完全でないと、よごれの除去も不完全に終わります。
     汚れ水の処理は、建築物の清掃では厄介な作業であり、手数を要しますが、この作業は単に汚れ水を取り除くというだけでなく、洗剤分の残留が悪影響を生じるのを防ぐ意味からも大切な作業です。
     ※洗浄したあとに洗剤分が残留すると、その後のよごれの付着を促進し、あるいはカビの発生やダニの繁殖を招く場合がありあす。また、アルカリ度の強い洗剤の残留は、樹脂床維持洗剤を塗った場合に皮膜のできるのを阻害します。

    3回目 講座の様子

    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業09
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業10
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業11
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業12

    3回目 概要

    古民家の傷みやすい部位とその改修方法について(現在の一般住宅と古民家の違い)

    2019年11月30日14:00
    廣谷昭 氏(株式会社A&Aリフォーム 代表取締役)

    ■ 現在の一般住宅と古民家の違い

    1.古民家と現在の住宅に関する建築関係の法律について

    建築に関する規制は、古くから時代に合わせいろいろ変わってきました。江戸時代以前にも、高さや広さ身分による住居地域の区画や安全に関する規制など多くの規制がありました。

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    大正時代になって用途規制・建蔽率・高さ制限・防火対策が施工されましたが、関東大震災までは、地震対策に関する法律はありませんでした。

    戦後昭和25年になって現在の建築基準法が出来、古民家と呼ばれる住宅は、これ以前かこの法律が施工されたころにできたものと思われます。古民家を改修工事する場合、その当時の法律で建てられた建物を現在の基準に合わせるのは難しいので、増築・用途変更をしない場合は、特に規制なく改修工事ができます。

    用途変更の場合でも2019年6月24日建築基準法が改正され100㎡以内か200㎡を超えない場合に確認申請を提出する義務はないと変更されました。この処置は、現在空き家となっている住居の多くが100㎡~200㎡でありその活用を促進させるために法律の改正が必要だったと考えられます。しかしどのように改修しても自由というわけではなく現在の建築基準法に適合した工事をすることが必要です。また3階建ての建物に福祉施設を作る場合には、避難階段が2か所必要になります。また第一種低層住宅専用地域には、200㎡の店舗は作ることができません。また渡り廊下等でつながった家屋を改修する場合、つながった両方の建築面積が合算されますので注意してください。面積の緩和により多くの改修工事がしやすくなりましたが、工事をする場合には、建築会社・設計事務所・建築指導課等に事前に相談することが必要です。

    2.古民家とは

    古民家をどのように定義するかは、明確な基準はありません。今回ここで古民家として検討しようとしているのは、木骨石造倉庫・歴史的建造物・寿原邸のような大邸宅ではなく、50年以上前に作られた趣きのある外観・和風下見張り・洋風下見張りの住宅 ギャンブレル屋根(2段に折れた屋根)、外観が洋館風の住宅・趣のある和風住宅等が対象です。

    小樽に古民家が多いのは、建築に建て替え時期のチャンスであった高度経済成長期(昭和30~48年)の乗り遅れ、戦後の斜陽から脱却できずにいたため、戦前に建てられたものが多く残ったようです。

    しかし小樽運河保存運動(昭和48~59年)によってこのピンチをチャンスにすることが提案され、古い建物を再利用して生かす文化的運動が観光という経済活動に伴って進められてきました。

    昭和58年堺町通りに北一硝子三号館が肥料用倉庫を改修した店舗を作り営業を始めました。私はその当時こんなさびれたところにこのような施設を作って大丈夫なのだろうかと思っていましたが現在は、堺町通りの繁栄の中心になりました。

    平成6年の酒税法の改正により小規模の地ビール工場ができるようになり、平成7年には、運河沿いに小樽地ビール 小樽倉庫No1ができ運河周辺に多く多くの人が集まるようになりました。それをきっかけにその周辺の倉庫にも様々な店舗が営業するようになりました。

    今回 小樽にまだ多く残っている古民家という資源を、どのように利用していくのかを考えるきっかけにしてほしいと思っております。
    小樽の古民家は、大切な文化財の位置づけにあると思っています。小樽には現在およそ1000棟の古民家を含む歴史的建造物が現存し、そのうち200棟が新たに利用され現在の小樽観光をけん引しています。したがってまだ800棟が再利用されずに残っているわけで古民家再生の旗手としてどのように利用するべきかを皆様と考えていきたいと思っています。

    3.空き家

    小樽市は平成27年度に「空き家調査」を行い、良好985棟、準不全1,052棟、不全386棟、合計2,423棟の空き家を確認しています。
    良好とは少しの改修で使えるもの、準不全とはそれなりの改修をしなければ使えないもの、不全とは倒壊寸前か改修不能のものをいいます。
    私たち(小樽市や小民再)が有効に使おうとする物件は、良好と準不全の2,037棟です。この中に古民家がどれだけ含まれているかは未調査です。

    4.現在の一般住宅と古民家の違い

    戦後に建てられた一般住宅は、住むところがすくなかったため大量に簡素なつくりで造られていました。政府としても特に規制を設けず、人々が雨露をしのげる住居を多く造る事が政策でした。現在の環境とは異なり、冷蔵庫・水洗トイレ等もなかった為、北向きの寒いところに台所や・トイレを作り、食べ物が腐りづらいように間取りを設計していました。また現在より家相が一般的に住宅建築に生かされていたため、鬼門・裏に玄関・台所・トイレ等を配置しないようにその当時の住宅は造られていましたが、土地の形状によっては、家相通りに立てられない建物も多くあると思われます。
    この時代は、冬に暖房をとるための燃料置き場、主に石炭倉庫が付属していました。石炭に火をつけるための木材も家の周りに積んでいました。子供のころマキを細かく割って新聞紙で火をつけ石炭に火が付くまで時間がかかり寒い思いをしたことが思い出されます。水道がまだ普及せず井戸水を汲んで生活していた家庭も多くありました。浴室のない住宅の方が多く近所の銭湯に行くのが普通でした。
    その当時、小樽を代表する建築物にも一般住宅建築にも床・壁・天井に断熱工事を施工することは、一切ありませんでした。この寿原邸のような高級住宅でさえ断熱をすることはなく北海道に適した断熱材や断熱サッシが取り入れられたのは、昭和の終わりくらいからだと思われます。

    ①屋根

    北海道の場合、戦後の住宅のほとんどの屋根は、マサ葺き屋根にトタン貼りでした、一部にマサ葺きだけの家もありました。まさは、30cmぐらいの丸太を3mmぐらいに割って作った板を屋根の下から吹き上げていく方法で、口の中に短いくぎをいっぱいくわえ機械のようなスピードでマサにくぎを打つ光景を覚えています。マサの重ねが多いか少ないかで屋根の出来が全然違いました。当然重ねを多くとると屋根が厚くなり雨漏りのしずらい屋根になります。また寒冷地向きの工法ではないのですが、屋根下地のバラ板をそのまま見せる天井のない構造もありました。北海道独自の寒冷地に適した住宅建築はほとんどなく、関東・関西で建てられていた風通しがよく夏を快適に過ごせる住宅が主流でした。

    ②壁

    古民家の多くは、外壁に下見板張りを使用しています。土蔵のような土壁もありましたが、雨や雪で傷みやすいので、板張りが多く使用されるようになりました。土壁を塗った上に下見板を施工する住宅も多く有りましたが、予算に余裕の有る建物は、この工法を取り入れていました。昭和25年以降 現在の建築基準法のもとになる法律ができ外壁を不燃材にすることが推奨された為 外壁をモルタル塗りとする住宅が多く建てられるようになりました。その当時のモルタルは、3回塗りで粒子の細かい砂から粒子の大きな砂 強度の強いモルタルから仕上げには、強度を抑えたモルタルを使い、25mm程度の厚さがあり現在のモルタルよりひびの入りずらい仕上げでした。現在の基準は16mm以上でほとんどが2回塗りでひび割れのしやすい工法になっています。
    ブロック住宅も多く作られ、隙間風が入らず寒冷地住宅として普及しましたが、通気性が悪く結露しやすいことや、間取りに制約があるため次第に数が減少しました。現在は、その短所を解消し高級住宅でブロック工法を取り入れているところもあります。この当時は、断熱工法の考え方がなく冬寒いのが当たり前でしたが、数年前ブロック住宅の内装を解体したときに1階の天井裏におがくずが20cm敷き詰めている住宅が有りました。もとの建て主が木材屋さんだったそうで、断熱を考慮しておがくずを入れたのだろうと思います。

    ①土台・木軸構造

    土台の材料として良いのは、ヒノキ・ヒバの心材(中心近くの材料)ですが、高級住宅で予算のある場合以外は、一般の木材が使用されているので通気の悪いところにある土台が腐食しているのがほとんどです。ただ断熱材等が使用されていないので乾燥がよく腐食の少ない土台も多くみられます。木軸構造に関しては、現在の工務店も柱・梁の施工に大差はありませんが積雪を考慮しない関東・関西系の構造を取り入れた住宅も多くあり、雪下ろしが必要な住宅がほとんどです。現在のように建築基準法で筋交いの量や補強金物の取付位置が決まっていませんでしたので、建てた棟梁の技量によるところが大きかったと思われます。

    ②台所・トイレ・浴室

    台所は、流し・水道か水がめ・七輪に・食器棚ぐらいの装備で、魚は七輪を外に置いて焼いていた記憶が有ります。朝食は、ご飯とみそ汁と漬物ぐらいで納豆や卵があったかはよく覚えていません。トイレは、汲み取り式で北側にあった為 冬は、汲み取りのための雪かきが大変な作業でした。昭和30年代ぐらいまでは、汲み取りもごみの収集も馬車で来ていた思い出が有ります。お風呂を沸かすのも真木か石炭の窯で火加減が難しくお湯もよく混ぜないと下のほうが冷たいこともありました。

    ③窓

    窓は、木製のガラス窓で二重窓にしている家もありましたが、ほどんどは一重で冬になる前に隙間を伏せるため目張りをしたり、ビニールで囲ったりしていました。朝起きると窓ガラスに氷の模様ができていて室内は零度以下になっていたと思います。

    ⑥間取り

    間取りは、台所に隣接した茶の間が6~8畳間その他に四畳半の部屋が2部屋ぐらいでしょうか。たまに洋風の部屋やベランダのついた家もありましたが、一般のサラリーマンが一戸建ての家を建てるのが一般的な時代ではありませんでした。

    ■ 古民家の傷みやすい部位とその改修方法

     古民家の改修工事においては、耐震性の問題・断熱性能の問題・暖房機器の問題、台所・トイレ・浴室の水回りの整備の問題等、予算を伴う大きな問題がいくつもあります。今回は、各部分の改修方法と予算の問題について考えていきたいと思います。

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    1.屋根の改修工事

    現在カラートタン下地として合板ベニヤが多く使われていますが、瓦屋根と違いトタンから直接高熱が伝わるので劣化が激しく、特にコンパネと呼ばれる合板は強度が弱くなり、十年ぐらいで合板を接着している接着剤が劣化し屋根の上を歩けなくなることもあります。

    屋根の改修工事を行う場合は、構造用合板12mmを使用することをお勧めします。またバラ板と呼ばれる木材を使用している場合も多くありますが、乾燥・腐食に強く特に問題はありません。屋根改修工事でバラ板の劣化が激しくない場合、その上に構造用合板を重ね張りしても構いません。構造用合板には、耐震補強性能もあります。

    私は、運河周りの倉庫の改修工事を何軒か行い、屋根の吹き替え工事も行いましたが、野地板の貼替工事はほとんどしていません。雨漏りしている部分以外は、何十年も前の材料がそのまま使える状態でした。昨年行った瓦屋根をカラートタンに吹き替える作業でも野地板は、そのまま使うことができました。

    屋根から結露がしたりツララができる場合は、室内の熱が屋根表面を温め雪を溶かし氷になるのが原因です。屋根の雪が解けても軒先で外気に触れたとたん氷になります。屋根にヒーティングを入れても寒い日には、ツララを大きくするだけで逆効果なことがありますのでご注意ください。

    結露を防ぎたい場合は、屋根に断熱材を張り結露を少なくする方法があります。

    天井裏の断熱も十分に行い。小屋裏に通気口を取付け、小屋裏が熱くならない様に通気が有ることを確認して、小屋裏に湿気がたまらないようにします。小屋裏の通気が悪い場合、野地板に水分がたまり腐食することがあるのでご注意下さい。

    さらに結露を防ぐため屋根を二重にする通気工法もあります。断熱材の上に通気層を施工し棟換気で室内の熱を屋根に伝えない構造です。無落雪屋根の場合は、難しい工法です。

    2.断熱に関する工事

    古民家と呼ばれる住宅は、ほとんど断熱に関する工事がされていません。改修されて断熱工事がなされている住宅も多くあると思いますが、断熱工事をするためには、1階床材の撤去・内部壁材の撤去・雨が漏れている場合は、外壁の撤去が必要になります。古民家を再生するには、外壁材は復旧しなければなりませんし、窓には断熱性能の良い断熱サッシを使用して、古民家の雰囲気を再現できるか大きな問題が有ります。小樽公園に隣接する坂牛邸でさえ一部はアルミサッシを使って改修工事をしています。

    3.暖房工事・水回りの工事

    北海道の冬に暖房設備は欠かせません。古民家を改修する場合、現在使われている石油ストーブやパネルヒーター・エアコン暖房等を使用することで室内の雰囲気が大きく変わります。外観を重視し内部に関しては、あまりこだわらないほうが古民家を再生する場合良いのかもしれません。

    キッチン・トイレ・浴室に関しては、使いやすさを重視し快適な環境を整えることがだいじになります。

    ■ 事例を通して

    古民家再生の一例として徳島県西部に位置する三好市祖谷の奥に落合という、江戸時代中期からある山の急斜面に面した茅葺屋根の集落が有ります。

    40年ほど前にアメリカ人のアレックス・カー氏が学生時代ヒッチハイクで訪れたこの集落が気に入りその当時120坪の土地が38万円(家屋はただ)の家屋を友達に借金をして買い取ったのが始まりで、集落の人々と何度も部落集会を開き、住民の合意を取り付けプロジェクトが動きだしました。最初に屋根の茅葺の改修工事を行いましたが、茅がすぐにダメになってしまいました。古くから地元で茅葺を出来る人が老齢化していたため、他県から職人を雇い屋根の全面改修を行いました。暖房設備も民家に適するようにストーブ等の暖房設備は使用せず、床暖房とし民家の雰囲気を壊さないように設計しました。水回りの浴室やトイレは、最新の設備を整え一部はヒノキ風呂にするなどの工夫もしています。

    2012年に3回目の改修工事で誕生したのが 桃源郷祖谷の里です。最終的には5000万円の費用がかかったそうです。

    今回の小樽の古民家を残し再生しようとする気持ちもこれと同じ趣旨だと思っています。あきらめない気持ちで小樽の良さを残すことが、これからの小樽の魅力につながると信じています。

    アレックス・カー氏は、京都町屋の改修工事も積極的に行い。民泊施設などで町屋を改修しています。それをきっかけに町屋を積極的に利用する人が増え、町屋を残す活動が盛んになっています。観光客が増えるにつれて町屋の利用が増えると考えていましたが、インバウンドが町屋を購入し、改修するより解体し、新築の宿泊施設を建てたほうが利益につながるという理由で町屋が減少し始めています。町屋を購入した人の半数以上が町屋を解体し新しい建物を建築しています。京都市の条例でもそれを取り締まることが出来ず。購入した人の自由にまかせています。

    小樽でも石蔵や古民家が海外資本に売却されています。大正時代の建築を代表する和光荘も海外資本に買収されました。しかし海外資本が買収したからといってそれが必ず悪い結果になるとは限りません。日本人よりその建物の価値を高く評価し利用しようとする方も多くいますし、その建物を利用し小樽の街で立派に商売をしている人もいます。

    ■ 古民家改修の費用

    古民家を改修するには、多くの費用が掛かります。

    水回りキッチン・トイレ・浴室・で500万円、断熱・外壁工事・断熱サッシ改修工事で500万円 暖房設備工事・店舗・宿泊施設にするための内装工事で500万円 合計1,500万円ほどの費用が掛かると思われます。これはあくまでも概算ですが安易に改修工事だから安く済むのではないかという考えは、間違っています。

    4年前に60年以上前に建てられた私の自宅を2世帯住宅に改装しました。増築・改修を繰り返し6回目の改修工事でした。2階部分の壁は、土壁の状態だったので解体し断熱材を入れなおしました。以前物置として使用していた部分を居間に改修したのですが、土台が腐っていて総入れ替えでした。予算は1,000万円の予定でしたが、最終的に場合1,600万円かかりました。

    改修工事は、新築と違い解体工事を伴い、その状況に合わせた木構造の改修工事が必要になりますので、経験のある工務店・建築会社でないと臨機応変に対応出来ません。十分に検討し、どのように改修したいか、予算はどれくらいかを十分に検討し、工務店・建築会社に相談してください。その時は、建築の確認申請書・検査済み書・平面図・立面図等をご用意ください。

    ■ 改修技術の向上を目指して

    私たちは古民家の改修技術の向上を目指す方々を増やし、小樽の古民家や空き家が活用される一助になればと願って、こういった事業を行っています。

    できれば皆さん方がたとえば「小樽古民家再生隊」といったコミュニティを自主的につくられ、私たちと連携して活躍できる環境を整えていきたいと展望しています。是非積極的に小樽の財産を活かす運動の一員として、仲間として、我々にできることを蓄積していきたいと考えています。

    4回目 講座の様子

    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業13
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業14
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業15
    旧寿原邸リノベーションまちづくり交流事業16

    4回目 概要

    旧寿原邸にまつわる歴史講座&語りべ落語

    2019年12月7日
    石井伸和 氏(NPO法人歴史文化研究所 副代表理事)

    語りべ落語(かたらく)

    ■ 落語とは  ※『世界大百科事典』平凡社参照

    1.歴史

    「落語」という語の最古の記録は『新作落語徳治伝』(1787年)だが、ルビに「おとしばなし」とふられている。音読みで「らくご」と呼ばれ始めたのは明治中期で、しかも「寄席へ話を聞きに行く」認識だった。「落語」という言葉が普及したのは昭和年代。もちろん日本の独自文化。

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    2.特質

    軽妙で滑稽な話をして聴取者を笑わせ、最後に「おち」をつける。話術の形式や演出には、芝居噺、音曲噺、怪談噺、人情噺、三題噺など。とくに「人情噺」が最も多い。

    3.落語の現代的意義

    科学技術文明の発達にともなって、交通手段、通信手段、生活環境など人間の回りのあらゆるものが進化しているが、自然環境がその犠牲となり、人間関係までデジタル化しつつあって、自然環境と人間関係が置き去りにされ、むしろ退化していると言っていい。
    落語の中でも「人情噺」はまさに人間関係の原点を指し示し、しかも特権階級ではない市井の人々の心理を表現している。だから「落語」はまさに人間関係賛歌であり、今日的反省を込めていうなら、誰もが享受できる国民的芸術といえるのではないか。

    ■ 林家とは

    林家三平(1925年11月30日 – 1980年9月20日)
    本名:海老名泰一郎(えびな やすいちろう)旧名栄三郎(えいざぶろう)

    父正蔵の前名は7代目柳家小三治。当時人気のあった初代柳家三語楼の一門であった。 7代目柳家小三治(7代目正蔵)も師匠に従い三語楼協会に加わった。まもなく「林家」の屋号を名乗る。
    三平は、父正蔵がかつて名乗っていた前座名。師匠が柳家三語楼なので「三」の字を採った。
    テレビ時代の申し子と謳われた三平は、テレビが生んだ最初のお笑いブーム、「(第一次)演芸ブーム」の火付け役かつ中心的存在であり、また「爆笑王」の盛名をほしいままにした。
    時事ネタを中心に、「よし子さん」「どうもすいません」「こうやったら笑って下さい(と額にゲンコツをかざす)」「身体だけは大事にして下さい」「もう大変なんすから」「ゆうべ寝ないで考えたんすから」「坊主が二人で和尚がツ―(お正月)」などの数々のギャグと仕種で一気にたたみかける爆笑落語で人気を博した。

    ■ 林家とんでん平

    昭和27年小樽市信香町生まれ。昭和54年東京までの「リヤカー行脚」(約1,000km38日間)で林家三平師匠に弟子入りを希望。昭和58年8月1日、入門許可をいただき「とんでん平」を命名されるも、20日後、三平師匠は逝去。「見習い」「前座」の段階を超え「二つ目」となった34歳、東京から沖縄までのリヤカー行脚実行(約2,000km4ヶ月間)。以後、デンマーク、ロシア、中国でも片言の外国語で落語行脚断行。そして本州一周手話落語のリヤカー行脚(4,000km140日)の旅を終えて郷土小樽へ。平成8年には真打ち昇進。
    中央の演芸場やテレビより、地方地方で市井の人々との交流を込めた落語人生を疾駆した異色の落語家。

    ■ 語落(かたらく)

    「かたらく」とは、「語りべ」と「落語」を合体した小樽発祥のコラボ。
    「語りべ」は、小樽の様々な歴史を多くの古写真を用いて「なるほ堂」が歴史解説をし、「落語」は、「林家とんでん平」師匠が軽妙な語り口で、歴史解説のネタを庶民の目からみて組み立てた創作落語である。
    これによって、聴取者は小樽の歴史を楽しく学ぶと同時に、時代考証を添えたリアリティが匂い立ち、聴取者間の交流ネタにもつながる。語落は新たな知的遊びであり、小樽発の観光メニューである。

  • [2019年3月9日 開催] リノベーションまちづくり交流見学ツアー終 了

    リノベーションまちづくり交流見学ツアー
    リノベーションまちづくり交流見学ツアー申込書

    開催結果報告

    見学会当日の行程

    平成31年3月9日(土)

    09:30
    スタッフ集合「石と鉄」
    宮田純一 氏、廣谷昭 氏、川嶋王志 氏、中野むつみ 氏、石井伸和 氏
    10:00
    参加者出欠確認、スタッフ・オブザーバー紹介
    10:08
    小樽市挨拶(小樽市建設部公園緑地課課長 宮田純一 氏)
    10:10
    第1回研修(講師・石井伸和 氏、中源博幸 氏、廣谷昭 氏)
    11:00
    質疑応答

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    11:30
    昼食・移動(2班編制)オブザーバー河野哲也合流
    12:45
    第2回研修(講師・石井伸和 氏、森義仁 氏、廣谷昭 氏)
    13:45
    質疑応答
    14:15
    移動 第3回のみの5名合流
    14:25
    第3回研修(講師・石井伸和 氏、小野英紀 氏、廣谷昭 氏)
    15:25
    質疑応答、第3回のみ参加者アンケート記入・回収
    16:00
    講師・オブザーバー紹介、参加者交流自己紹介
    16:15
    移動
    16:25
    第4回研修(講師・石井伸和 氏、杉本英樹 氏、廣谷昭 氏)
    17:15
    質疑応答
    17:30
    アンケート記入・回収
    17:45
    解散

    質疑応答集

    Q石蔵の構造強度と補強対策は?

    石蔵の構造は、木骨に軟石を積んだ木骨石造と、厚い石を外周部分に積んで屋根・床を木造で支える石造が有ります。木骨石造は、木造建築と同じ構造で一般の木造住宅を建築している工務店等で十分に強度の調査が出来ます。
    空き倉庫で床板・天井の解体が必要ない場合は、予算もあまりかかりませんが荷物の移動や内装工事の解体が必要な場合は、費用が掛かりますので事前に見積もりをお願いしてください。補強工事は、一般の工務店で十分に対応できます。

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    Q改修工事を行うとき注意すべきところは?

    着工前に必ず屋根裏面・梁上部・壁面の清掃をしてください。空き家だった場合、ハトの巣が有ったり小動物が住んでいて衛生上問題になる場合が有ります。工事の最中に清掃を行うと、工事中の材料が汚れ掃除が大変なので、事前に清掃・消毒を行って下さい。

    Q瓦屋根の補修工事をどうする?

    現在 瓦工事を専門にしてくれる工務店はほとんどなく、施工費を事前に見積もるのに時間が掛かります。また瓦屋根をトタン屋根に変える場合も、瓦の撤去等に多くの費用が掛かる場合がありますので、早めに連絡いただければ、調査を行います。

    Q石蔵のリノベーションに関する法的規制は?

    構造的には、特に規制はありません。自主的に痛んだ部分を直せば、問題ありませんが、建築基準法で用途変更の必要があります。消防法で避難誘導灯・消火器・火災報知器の設置が義務付けられる場合が有ります。飲食や宿泊施設の場合は、旅館業法・民泊新法・保健所への届け出等が有りますので事前に工務店や設計事務所に確認してから着工してください。

    Q給排水設備の費用は?

    物件によって違うので一概に言えませんが、給排水設備が無い場合、トイレの設置と、台所の給排水設備で200万円~300万円、宿泊施設で浴室と複数のトイレ・洗面がある場合は、400万円以上かかります。

    Q冷暖房設備については?

    一般的に石蔵を温めるには、多くの燃料と時間がかかります。特に2階部分に熱が逃げやすい構造の場合、1階はストーブの周り以外は、なかなか温度が上がりませんので、ひざ掛け等を用意する必要が有ります。特に宿泊施設を伴う場合は、夜でも完全に暖房を止められないので冬季の暖房費は、高額になります。10月から徐々に暖房すると少しは冷えなくなりますが、集客が少ないと暖房費用が問題になります。問題を解決するため1階の床に床暖房設備をするのが効果的だと思います。床の温度が18℃有るとほとんど寒さを感じませんし暖かい空気は、上に上がるので2階も温度が上がります。後はエアコン等の補助暖房で十分です。ストーブが無いので客席・寝具の配置が自由になり全体のレイアウトが楽になります。ぜひ設計・施工業者と検討してください。

    アンケート集計結果

    ● 住所

    小樽6人 札幌12人
    ※移住も目的の一つであることからベストなバランスでした。

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    ● 年齢

    30代4人 40代9人 50代4人 60代以上1人
    ※40代の働き盛りが多い事は歓迎すべき参加年代でした。

    ● 性別

    男性7人 女性11人
    ※女性が多い理由には、小規模なビジネスとデザイン志向がうかがえます。

    ● 職業

    第二次産業3人 第三次産業12人
    ※第三次産業従事者が多いのは当然の結果といえます。(無記入者あるため合計合わず)

    ● 立場

    雇用主4人 正規雇用7人 非正規雇用2人 その他5人
    ※非正規雇用が多いのは意外で、人生のありかた再生ニーズがうかがえます。

    1. このツアーをどんな媒体でお知りになりましたか?

    チラシ5人 知人の紹介9人 その他4人
    ※知人の紹介やその他にはFBが含まれ、SNS効果が高いようです。

    2. 参加日時のご都合は?

    都合良い10人 問題ない8人
    ※全員がこのどちらかなので、土曜日の日中はベストのようです。

    3. 見学施設4施設の組み合わせは?

    満足17人 やや満足1人
    ※不満の方はゼロなので、4店舗の組み合わせはベストだったようです。

    4. 説明はいかがでしたか?

    わかりやすい18人
    ※全員がわかりやすいと応えましたので、説明の視点や内容はベストです。

    5. 配布資料はいかがでしたか?

    満足18人
    ※全員が満足と応えましたが、「市内地図があればよかった」は参考です。

    6. 小樽の石蔵での起業は検討する価値がありますか?

    十分ある9人 ややある7人
    ※全員が検討する価値ありと応えたので、検討すべき層が参加しました。(無記入者あるため合計合わず)

    7. 小樽市の空家バンク制度をご存知でしたか?

    はい8人 いいえ9人
    ※札幌からの参加者の殆どが知らないので、札幌向けPRも要検討です。(無記入者あるため合計合わず)

    8. このような小樽独自の見学ツアーは、有料でも参加したいと思いますか?

    無料だから参加した1人 どちらともいえない5人
    ○○円くらいなら参加する(11人①500円2人、②1,000円5人、③2,000円4人)
    ※11名が有料OKで、1,000〜2,000円が妥当な料金のようです。(無記入者あるため合計合わず)

    9. 今回の4店舗で、あなたご自身はどの店舗に興味ありますか?

    「石と鉄」9人、「ヴェールボア」4人、「蔵宿末広」13人、「キンダーリープ」7人
    ※一番人気が蔵宿であることから宿泊施設として石蔵検討がストライク。(複数○があるため合計合わず)

    10. 今後、ご希望の見学ツアーなどはありますか?

    ①石蔵以外の再生古民家ツアー
    ②同様に石蔵内部を見たい
    ③築港ツアー
    ④宿泊施設を中心としたツアー
    ⑤港建築ツアー
    ⑥歯科医院などの石蔵も見てみたい
    ⑦地域ごとにあれば行きたい
    ⑧GoldStone
    ⑨小樽の重文ツアー
    ⑩近郊の野菜採れたてツアー
    ⑪手つかずの石蔵またはリノベーション中の石蔵ツアー
    ※千差万別なニーズがあることがうかがえます。小樽は見学ネタが多い。(無記入者あるため合計合わず)

    11. 今回の見学ツアーについてご意見などがありましたらご記入ください。

    ①とても内容が充実していてランチも食べることが出来参加して良かった。思った以上にいろいろな話が聞けました。
    ②石蔵建築について直接話が聞けてためになりました。
    ③とても勉強になり、またツアーがあったら参加したい
    ④小樽の知らない所がたくさんあり、とても勉強になった
    ⑤再度ツアーがあれば参加したい
    ⑥資料が細やかで勉強になった。写真がとくに魅力溢れる構成で感銘
    ⑦楽しかった。石蔵の活用のされ方、付加価値、独自性が店舗ごとに異なり興味深かった。それぞれの職種の特徴や改装費も聞けて有益。石蔵以外の小樽の歴史を学べて良かった。
    ⑧実際に使用されている方の話を聞けて楽しかった
    ⑨現在は札幌ですがもともと小樽出身。小樽の良さを実感しました。またゆっくり小樽を回り小樽の魅力を探してみたい
    ⑩ランチを楽しみにしていたがヴェールボアは残念。石蔵がもったいない
    ※おおかね資料や説明の内容に大きな評価が読み取れます。(無記入者あるため合計合わず)

    アンケート総括

    評価

    ● 目的達成度

    目的「石蔵の価値向上と地域活性化、まちづくりの価値向上にも寄与している様子を確認すると共に、新たな起業者の発掘、移住者の増加」に対し、「4施設の組み合わせ」「説明のわかりやすさ」「配布資料の体系」に全員が満足と解答し、「小樽の石蔵での起業は検討する価値ある」についても、ほぼ全員が肯定的に実感されたことは、目的に向けて十分効果がありました。

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    ● 再発見

    今回のツアーでは、札幌からの女性参加者が多いことにより、この層に小樽の石蔵ニーズが眠っていることが判明しました。石蔵が小規模であることやデザイン性に優れていることが、女性らしい起業動機と考えられます。

    ● 媒体効果

    時代的にSNS効果が向上していることが確認できましたので、今後は集中的に札幌の女性層向けSNS戦略を講じることが有効と思われます。

    ● 日時

    日時に関しては土曜の日中が想像通りベストでした。地理的都合を勘案し、各見学先を90分から60分に短縮すれば、コース全体の時短や逆に見学先増も可能と思われます。

    改善

    ● 検討課題

    ① 応募枠拡大と複数回の実施検討
    ② 市外参加者対象の小樽講座を設ける
    ③ 石蔵以外の再生古民家ツアーの検討
    ④ 古民家宿泊施設を中心としたツアーの検討
    ⑤ 手つかずの石蔵またはリノベーション中の石蔵ツアーの検討

    ● 有料検討

    仮に有料を想定し、アンケートの最大公約数1,000円で20人とした場合、収入が20,000円ですが、これでは自走は不可能です。たとえば宣伝をHPやSNSに限り、講師をコーディネーターとオーナーに限り、移動交通費がかからないようにするなどの工夫をしても、まかなうことはできません。企画、撮影、交渉、デジタル制作、予約確認やランチ調整などの目に見えない経費、およそ30万円を補助金等に頼らねばなりません。

    講座の様子

    リノベーションまちづくり交流見学ツアーの様子
    リノベーションまちづくり交流見学ツアーの様子
    リノベーションまちづくり交流見学ツアーの様子
    リノベーションまちづくり交流見学ツアーの様子

    見学先情報

    石と鉄01
    石と鉄02
    ヴェールボア
    蔵宿末広01
    蔵宿末広02
    キンダーリープ01
    キンダーリープ02

    専門家資料

    石蔵リノベーションあれこれ

    ■ 一般的な改修箇所

    改修工事を行う場合、専門家と一緒に調査が必要です。石蔵の傷み具合 土台(木骨石造) 梁・柱の状態・軟石の傷み具合、屋根の状態 とくに瓦屋根の場合は瓦屋による調査が必要です。

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    ■ 軟石の修復

    多くの石蔵は、北面の下部分に雪解けが遅く軟石内部の水分が抜けないための劣化が多くみられます。軟石の完全な修復方法は確立されておらず、モルタルによる補修と防水材による処理で、補修するのが一般的です。余市ニッカウィスキー工場の外壁の多くがモルタルで軟石のように見せた作りとなっており、かなり本物に近い補修が出来ます。

    ■ 瓦屋根の修復

    屋根が瓦の場合、専門業者の調査・見積が必要ですが、瓦の業者がほとんど廃業しているので、見積も大変です。板金屋根に改修する場合も瓦の撤去・処分が手作業の為業者により見積もりの金額が大幅に変わるので注意してください。

    ■ 木造部分の修復

    石蔵と母屋のある場合、母屋の木造部分の修復は、一般的な工務店で十分対応できると思います。

    ■ 保健衛生や防火対策

    給排水がない石蔵では、工事に多くの予算が必要。新たに開口部が必要な場合も補強方法が有りますので設計事務所・工務店に相談してください。
    消防法については、面積 無窓階(消防法による避難可能な窓の大きさが設置されていない建物)によって消防設備が大きく変わるので事前に消防との協議が必要。特に150㎡以上の無窓階の場合、消火設備が必要になり現実的ではなくなります。石蔵と母屋がつながっている場合は、両方の合計面積で算定されますので注意してください。建物の面積等に関係なく防火対象物使用開始届は使用の1週間前に提出しなければなりません。

    ■ 飲食系の注意点

    飲食業に改修する場合、用途変更(100㎡以下は不要)消防法による避難誘導灯・消火器の設置 30人以上の客席を有する飲食店では、防火管理者の資格が必要になります。2階に30人以上の客席がある場合には2以上の階段か避難器具の設置が必要になります。(消防法では、50人以上ですが小樽市の場合30人以上で適用になります。)又3㎡で1人と計算されるので固定席が少なくても30人以上と判断されることが有ります。空き家の倉庫だった場合は、ハトが巣を作っていたりするので着工前に高圧洗浄したほうが良いです。

    ■ 宿泊系の場合

    宿泊施設に改修する場合も同じく消防法が適用になります。6月から旅館業法の改正がある予定で、200㎡以下の場合用途変更の必要が無くなる予定です。用途変更の必要はなくなりますが建築基準法・消防法が緩和されるわけではありません。
    石蔵の暖房は、急に温度を上げたり出来ません。特に1階部分は、温度が上がりづらいので十分な暖房計画が必要です。床暖房が理想だと思います。ストーブ等を設置すると、その周りの空間が自由になりませんが、床暖房の場合、自由に寝具などの配置が出来ます。1階床を床暖房にすると2階は、エアコン程度で良くなります。初期投資の費用はかさみますが、狭いスペースの場合とくに有効だと思います。

    ■ 物販系の場合

    物販店舗に改装する場合も同じ消防法が適用されます。2階床面積は4㎡で1人と算定されますので2階面積が120㎡以上だと30人以上とみなされ非難設備が必要になります。

    ■ 最後に

    石蔵は、一つ一つ違う条件が出てくるので一まとめには出来ません。小樽は多くの物件で既存不適格(建物を建てた当時の法律に適合していたが、現在の基準法に適合していない)な建物が有りますが特別な緩和措置によって利用できる場合があります。事前調査の相談は、費用をかけないである程度までできます。

    株式会社A&Aリフォーム 代表取締役 廣谷昭

    (元阿部建設設計部長、再生工事のプロフェッショナル、小樽石蔵再生会顧問)

  • [2019年3月3日 開催] 「あなたはどうする?」古い建物の活かし方 リノベーション&活用セミナー終 了

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    講座内容

    第1部「古い建物こそ小樽の財産」

    【出席者】酒井 秀治 氏(SS計画代表、まちづくりプランナー、一級建築士)


    自分の原点は東京の路地空間

    今日のテーマは「古い建物」ですが、建物を含め遊休資産の中でもっと使えるスペースはないのか、暮らし豊かにするリノベーションとまちづくりまで広げて考えてみたいと思います。
    まず私が考えるリノベーションの4つの定義です。ひとつ目は、リノベーションはリフォームとは違い、今ある用途から新しい用途へ変えることが大事であり、そこに別の価値を生むこと。ふたつ目は、再開発など大きな投資だけではなく、小さな活動を連鎖的に行なっていくこと。3つ目は公共性をともなうまちづくりです。建物を改修することで、それが周囲にどのように波及していくかが重要です。4つ目はリノベーション空間から何を生み出し、どのように生き生きとさせるのかです。この4つが、リノベーションによるまちづくりだと私は思っています。

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    自分がリノベーションに関わった原点は、東京の路地空間にあります。私は生まれが札幌で、大学では建築と都市計画を学びました。26歳から東京の建築コンサルタント会社へ就職。そこで出会ったのが路地空間です。小樽のみなさんは暮らしの中で生活感あふれる路地空間は体験されているかもしれませんが、私は札幌育ちなのでネコが路地を歩く、長屋的な、醤油を借り合うようなとても濃いコミィニティを知りませんでした。東京にはまだそのような場所が残っていました。
    しかし阪神淡路大震災のあとで、国としてはこのような路地空間は、火災が起きたら消防車も救急車も入れず、避難する場所もなく、災害に弱いということでいっきに国の補助金を入れて防災まちづくりを推進しました。この仕事を進めていくということは、昔からあるコミュニティ、古い街並みを減らすことになるわけです。地域の人にとっては、災害に強いまちづくりは必要ですが、そこにたくさん残っている宝物も同時に守らなくてはいけません。

    リノベーションとまちづくりは地域の人々の理解が不可欠

    そこで私が、仕事とは別にリノベーションを手掛けた築70年になる3軒長屋の話しです。3軒続く真ん中にだけ、ご高齢のご夫婦が住んでいて両端が空いている味わいのある古い建物に出合いました。そこでここを一軒借りて何かできないかと、友達を6名集めました。セルフリノベーションで家賃が月5万円。光熱費を入れて6万。1カ月1人1万くらい、年間で70~80万円の持ち出しです。週末だけ通いで作業をし、6年間くり返してやっとできました。それが「ウィークエンド・サロン・プロジェクト」です。内部は、木造建築に詳しい人にきちんと確認しながら壁を徹底的にとり、床も2階は取り外して「1階の奥まで日が入り込むので、建物の価値が上がりますよね」と大家さんを説得し、吹き抜けを作りました。
    借り物件でリノベーションをするときには大事なことがあります。撤退するときに現状に戻さなくても済むよう、契約書に文言を付け加えることが必要です。そうしなければ、リノベーションで建物の価値を上げたとしても、結局、元に戻さなくてはならなくなります。
    「ウィークエンド・サロン・プロジェクト」の話しでもうひとつ思い出があります。あるとき、漆喰の壁塗りワークショップを新聞などで告知をしたとき、今では考えられませんが自分の携帯番号を載せてしまったのです。すると東京じゅうから私の携帯電話に電話がかかりまくりまして。結局、50~60人ほどが集めたのですが、そのとき問題が発生しました。隣に住んでいる大家さんが「サロンってなんだ?そんなことに貸した覚えはない。不特定多数を呼ぶとは何事だ!」と、イベントの前日に呼び出され、絶対に開催してはいけないと言われ…。最終的には理解を得て無事に開催できたのですが、路地空間などコミュニティが密な場所で何かをやるときには、地域の人と関係をつくってから行うことが大切なのだと痛感した体験でした。

    雑居ビルの空きスペースを仲間と有効活用

    次からは、札幌に戻って来てから手掛けた仕事の話しです。まず札幌の「OYOYOまちアートセンターさっぽろ」についてです。すでに取り壊されたRC構造の建物では札幌でも5本の指に入るほど古い、第2三谷ビルがありました。その6階の空きスペースを活用した例です。そこで何かやりたいという人を集めて話し合い「大人の放課後」というコンセプトをもとに、自分たちで内装を壊してペンキを塗り、電気、給排水の設備は業者に依頼しました。
    写真を撮る人、絵を描く人、飲食の修行をしたい人などが集まり小さくグルーピングして部活動をやるという設定で、部費が1部活3万円です。部員をたくさん集めれば費用は安くなるわけです。みんな部費を払っているから「自分の居場所感」みたいなものが出てきて、さまざまな人たちのたまり場になってゆきました。このように、場所を使うときに、関わりたい人をなるべくたくさん集めることも大切だなと思いましたね。
    次の例が「越山計画」です。札幌駅前通り商店街振興会会長の越山さんが所有されていたビルが建て替えられることになり、取り壊しになるまでの半年の間そこを借り、アート、デザイン系の人たちといっしょにカフェとレンタルギャラリーを運営しました。ここも、内装やイスなどは手作りです。カフェで提供する500円の日替わりプレートランチにリピーターがつき、集客数が増えました。
    次は、北大近くの雑居ビルの例で、学生が運営するスポンサー企業による就活カフェ「13Labo」です。ここは、企業と学生の接点をつくりたいと活動する20代の小川陽平さんといっしょに行ったプロジェクトです。
    建物は4階建て鉄骨の志水ビルで、1階には劇団が入っており、2~4階を貸りています。2階は「13Labo」、3階をイベントスペース、4階をシェアオフィスにしました。おもしろいことに3階を一括で全部借りてから昨年の9月の地震が起き、それがきっかけで、行き場を失った札幌の学童保育施設に貸しているという状況です。
    2階「13Labo」は、階段部分を抜いても100平米くらいの広いスペースです。この面積で普通にカフェをやろうと思うと300~400万かかりますから、また徹底的にセルフリノベーションをしました。そこで小川さんの凄いところは、近くにある北大のサークル「札幌カフェ研究会」の学生たちをつかまえてきて、ゆくゆくは「13Labo」を運営させるからと言って、壁はがしや内装を手伝わせるという(笑)。彼らはそのような工事を一度もやったことがなかったそうです。経験がないのに「ここに板を張りたくなった」とか言って、ホームセンターで板材を買ってきたり、ホームセンターよりネットで買うほうが安いものはそれを使い、床も塗り、イスは中古でそろえるなど、バラバラですが雰囲気のある空間になりました。私が専門家としてアドバイスした部分もありましたが、ほぼ無視されましたね(笑)。保健所の許可が下りれば就活カフェがスタートします。

    道の文化財指定建築を活かすためトータルプロデュース

    雑居ビルの話しが続きましたが、次は道の文化財指定にもなっている「旧永山武四郎邸及び旧三菱鉱業寮」のプロジェクトです。ここは明治期に建てられた永山邸宅と、昭和初期に建てられた旧三菱鉱業寮が保存された貴重な建物です。三菱鉱業から札幌市が買い取って管理しており、来場者はそれまで1日たったの15人、年間5000人くらいです。それを若い人が集まる場所に変え、集客率を上げようというプロジェクトでした。
    旧三菱鉱業寮1階は、それまで単なる観覧施設だったのですが、そこを「和洋折衷喫茶ナガヤマレスト」につくり変えました。私がこのプロジェクトでこだわったのは、全体のトータルデザインです。それを実現するため札幌のワンダークルーという会社にお願いをしました。社長さんが30代と若くてやり手、札幌で人気の飲食店を複数手掛けています。野村ソウくんという優秀な方がアートディレクターやデザイナー、建築士もいる飲食業者で、ロゴ、商品提供、パッケージ、空間デザインなどすべてをおまかせしました。歴史的建造物なので、市が設置した学識経験者による検討委員会で、建物のイメージを壊していないか天井の色ひとつに至るまで調整・協議を重ね実現した例です。オープンして1か月ですでにトータル8000人の来館者があったそうです。
    そして、最後に小樽の話しです。まだ具体的なプロジェクトはありませんが、空き家を見に何度か来ています。稲穂にある4軒長屋は小屋裏があり、もとはスナックだったと聞いています。小屋裏はみなさんのお宅にもあるかもしれませんが、面積的な要件があり、床面積が増えてしまうこともあるので注意してください。この4軒長屋も、住居の中に商業用の店舗床が入り込んでいるのですが、全体の総床面積によっては複合用途になるため、住居も含めて防火設備が厳しくなるといったこともあります。長屋の場合、一部の改修のためにほかの部屋に迷惑をかけることになったり、建物自体がアウトになりかねないので、古い建物をリノベーションするときには、どのような扱いになるのかは勉強したほうがいいですね。
    ほかにも3階建てなのですが、たぶん2階建てだろうというものもありますし、坂の上にある一般民家の空き家が、すでに基礎部分が腐って傾斜し、買い手もつかないというものもあります。いちからジャッキアップして構造を変えるのか、床にとりあえず何かをかませてフラットにするのか、大きな最初の選択肢になると思います。
    空き家は「問題」という言葉とワンセットになり、マイナスのイメージを持つ傾向にありますが、それも活用次第で街の財産になります。小樽での活動はまだまだこれからで、私ももっと小樽に足を運びながらみなさんとまちづくりを考えていきたいと思っています。ここまで、ご清聴ありがとうございました。

    【質問コーナー】

    Q地域によって、古い建物の特徴や管理の仕方などの違いなどはありますか?

    酒井/札幌も小樽も雪国ですから、屋根が壊れて水が入ってしまうなど、建物の劣化が進んでいる場合は多いと思います。雪とどう暮らすのかは、地域にかかわらず課題はあります。小樽は「古い建物」といってもタイプがいろいろで一括ではありません。構造として素晴らしい古民家もあれば、雑居ビルも一般住宅の空き家もあります。それをトータルにどのようにストックするかですよね。「古い建物像」を決めつけず、さまざまなマッチングを模索するべきだと思います。

    Q酒井さんの活動は現物が先か、想いが先か教えてください。

    酒井/物件がなかったら何も始まりませんから、物件の顔を見て、個性を知ってから、そこで何をやるかが変わります。「古い建物を守りたい!」という想いだけがあっても行動しないのは、なにもやらないことと同じです。人との出会いもありますからケースバイケースだと思います。

    Q建物ごとに人との出会いがあるというお話しでしたが、そのつながりはどのように探しましたか?

    酒井/プロジェクト前段部分の背景によって違いますね。最初に行政の旗振りがある案件もあれば、商工会や商店街などとの連携から生まれる人のつながりもあります。地域のリーダーシップをとれる人と仲良くしていると、何でもやりたがりの人が人を集めてくれますね。私はいつも「自分がおもしろいと思えば何でも広告塔になる」と言っているのですが、その人が主役だよと言ってあげることが物事を動かす源だと思います。

    Q古い建物を所有していても不動産の人脈がない場合、どのようなところに相談をすればよいでしょうか?

    酒井/まずは行政といっしょに考えなくてはいけないことだとは思いますが、マッチングを模索したり、空き家バンクを活用するなど民間との連携も大切だと思います。

    Q酒井さんが手掛ける、ミツバチプロジェクトのことを知りたいです。

    酒井/これは札幌のビルの屋上が有効活用されていないことに目をつけ、8年間続けている「サッポロ・ミツバチ・プロジェクト」です。札幌市中心街の4丁目プラザ隣の「パーラー太陽」というパチンコ屋さんの屋上です。そこは昔スパだったのでフェンスが高くて緑化もされていて、養蜂をやるにはうってつけの環境でした。毎週2回、下は20代から80代のお年寄りまでが集まって養蜂活動を行っています。ビルの屋上はまったく使われていないですから、「古い建物」と言ってしまうとイメージが固定されますが、「使っていないところ」ととらえた例です。
    そこに巣箱を置き、採密して遠心分離機にかけ、缶詰めまでを行っています。花の違いを楽しめる商品や、企業と連携してこの蜂蜜を使った商品を開発するなどして、その売り上げは環境保全活動や子どもたちへの環境教育などに活用しています。蜂蜜を使った街のブランディング、札幌のひとつの魅力づくりとして企業さんとともに活動しています。ビルの屋上は養蜂だけではなくいろいろな活用法があり、資産ととらえていいと思います。

    第2部「古い建物の再生と活用を実現する」

    【出席者】
    酒井 秀治 氏(SS計画代表、まちづくりプランナー、一級建築士)

    福島 慶介 氏(N合同会社 代表、福島工務店 取締役)

    河嶋 峻 氏(合同会社ステイリンク 代表)

    五十嶺 若枝 氏(有限会社大成不動産 代表取締役、全国古民家活用推進協会北海道支部 支部長)


    古い建物を守って残し活用したい 物件と想いを合致させる取り組み

    酒井氏/まず、自己紹介をかねて福島さんからお願いいたします。

    福島氏/1977年生まれで建築家兼クリエイティブディレクターと名乗っています。今日は自分が代表のN合同会社と、父が代表の福島工務店のお話しをします。

    仕事の例をあげると、小樽の歴史的建造物第2号旧魁陽亭、旧後藤商店の1階右手テナントのお蕎麦屋さん。そして2011年から小樽商工会議所が中心になって進めている「港町プロジェクト」のコンテナカフェの復活事業。北海製罐の第3番倉庫や第3号ふ頭上屋31号、おととし都市景観賞をいただいた旧岡川薬局、指定72番の旧小堀商店など、小樽の歴史的建造物に多く関わっています。

    N合同会社で大事にしていることは「シンク・デザイン・アクト」で、考え続けることを大切にしています。仕事として成立するスタンスでまちづくりを行う会社です。基本的にはコンテナカフェや、古い建物のように、小樽特有の風景を活かしているものが多いので、このあといろいろとお話しができるといいなと思います。

    全文を読む

    河嶋氏/1991年生まれで、出身は道東の別海町です。高校は札幌、大学は東京で札幌へUターンして合同会社ステイリンクを設立して現在5年目になります。今、民泊やシェアハウスなどいろいろな言葉がありますが、私たちはゲストハウスという旅館業の許可をとって札幌市内に4店舗、小樽に1店舗、合計5店舗の宿泊施設を運営しております。特徴は、宿泊施設プラスアルファで、その場を活かしたコンテンツも提供しています。

    2014年札幌にオープンした豊平区のゲストハウス「WAYA」を皮切りに2軒目の「WAYAアネックス」、次にゲストハウス「雪結(yuyu)」といずれも築年数の古いアパートなどを改修しました。先月は、札幌の地下鉄円山駅から徒歩1分ほどの場所に2部屋のみの「アパートメントホテルYAMA」をオープンしたばかりです。あと1軒が、小樽市色内2丁目にある、唯一100年以上の古民家を利用したゲストハウスです。

    プラスアルファのコンテンツのうちのひとつはまずは、ゲストハウス「WAYA」の1階で、コワーキングとイベントスペースを会員制でレンタルしています。宿泊者もこのラウンジは無料で使えて、地元の人と宿泊者が交流することもできます。もうひとつが小樽の宿のコンテンツです。こちらも宿泊者と地元の人の交流の場として、クラフトビール専門の飲食店をやっています。もうひとつは、ゲストハウス「雪結(yuyu)」の昼間の時間帯を利用して地域の小学生を対象とした放課後スクール(学童保育)をやっています。学校が終わる2時半くらいから夜の8時くらいまでゲストハウスのスペースで子どもたちを預かっており、海外の人と子どもが交流するなど学童保育のプログラムを行っています。

    私たちのこだわりは、古い建物を活用した施設づくりと運営を自分たちで行うことです。旅館業の申請、初期コストの計算、資金調達、備品購入、清掃、予約管理など6割は自分たちでやります。初期費用をおさえ、なるべく自分たちで安く早く改修をするモデルです。

    五十嶺氏/1968年生まれで、今年50歳になりました。岩手で生まれ、母が小樽出身なので生まれてまもなくから小樽在住です。不動産業を営んでおり事務所は小樽市花園の大正時代の古い建物で約100年前のものを使っています。今はブームにもなっていますが、古民家好きが高じまして、大工さんの伝統的な技術などいろいろな面に目を向けている組織を知り、北海道支部支部長をつとめせていただいております。

    空き家問題が全国で数多くありますが、現在石狩市で古民家を活用した宿泊施設を手掛けておりまして石狩市、地元の農家さんなどといっしょに地域おこしとして農泊にとり組んでいます。

    酒井氏/福島さんにお伺いしたいのは、1930年築の岡川薬局を、宿泊施設とカフェにしていらっしゃいますがその経緯を教えてください。

    福島氏/ちょうど自分が30歳で東京から戻ってきた年くらいに、岡川さんが建物を売りに出す話がありました。私は横浜で、エリアをひとつのホテルと見立てる〝ホステルヴィレッジ″というとり組みに関わっていたこともあり、とくに観光都市の小樽で宿泊業をやりたいと思っていました。願わくば、古い建物を守って残し活用したい。そんな想いは漠然と持っていました。

    ちょうど福島工務店の斜め裏手に岡川薬局と新谷(あらや)さんという家があり、それは自分が昔から見ていた風景だったのですが、新谷さんの家がある日突然、解体されるのですね。その様子を見ていると、そこの側溝で昔、手を切って洗ったことなどが思い出されて、形あるものを失ってしまうとき、思い出までが無散してしまうような恐怖を感じました。

    また、実家に昔から飾っていた油絵が岡川薬局っぽいなぁとか、岡川薬局は小樽市の歴史的建造物32号で、自分がそのとき32歳だったなど、いろいろな状況が重なり「もう仕方ないな」と思い購入することにしました。私は自分が建築家ですし、実家が工務店だったから改修の手法や法規的なことも社内で解決できたという、ラッキーな例ですね。

    酒井氏/リノベーションの苦労話はありますか?

    福島氏/1930年当初の建物がとても丈夫で、今行えば1億くらいかかるような金額をかけて建物が建っていました。丈夫なことはいいのですが、断熱性はまったくありません。カフェは吹き抜けの造りなので冬がとても大変で、暖房費が半端ないんです。天井にサーキュレーターをつけても2階だけがものすごく暑くて下は寒い。そこで、足もとに強めのサーキュレーションを置き、風を上に向けたらグラデーションかかって全体が温まりました。試行錯誤の末、7年目にして発見した、室内暖房の技です(笑)。

    古い建物と一般の建物の流通をネットワークする必要性

    酒井氏/河嶋さんはゲストハウスを始めるときは、どのようにスタートしたのですか?

    河嶋氏/ゲストハウスをやろうと決めたのは東京にいたころで、大学4年生でした。3名の創立メンバーが1人100万ずつアルバイトで貯め、合計で300万の初期費用を用意して札幌へ来て、物件を探しました。何の実績もなく不動産屋に行って「ゲストハウスをやりたい」と言っても「何ですか?それ」となり、なおかつ「あなたに貸す物件はありません」と遠回しに言われるという(笑)。仕方がないので、地下鉄の3路線を3人で手分けして地図を持って、歩いて駅から近い空き家を探したりもしました。見ていく中でエリアを絞り、そこの商店街リストをインターネットで調べ、理事長さんに突然電話をするわけです。最初はあやしまれましたけれど、粘りに粘ると「商店街にはないけれど、自分の両親が住んでいた空き家があるけれどね」となり、そして決まったのが「WAYA」1号店です。

    酒井氏/小樽の宿泊施設の場合はどうされたのですか?

    河嶋氏/開業するきっかけは、いくつか宿泊施設を運営していると逆に「このような物件がありますが活用してくれませんか」という話が来るようになりました。そこで出てきたのが小樽だったのです。小樽は街並みがよく、観光客が多いわりにゲストハウスが少なかったこともよかったです。

    もし今から始める方は、最初に想いを伝えて説得していくしかないと思いますが、間借りからでも始めてしまい、実績をつけてからだと、物件が集まってくるかもしれません。不動産会社で探したとき、信頼度も違うと思います。

    酒井氏/不動産会社では、空き家や古い建物は一般の流通にのってくるものなのでしょうか?

    五十嶺氏/不動産会社のほうではあまり出回ってはいません。古民家となると歴史的建造物になるので福島さんとか、小樽にもそのような古民家のプロジェクトが専門で実績のあるところもあります。

    酒井氏/石狩市の農泊プロジェクトは、建物を持っている人と運営する人との関係とはどのようなものですか?

    五十嶺/過疎地域のご高齢の持ち主さんから、手放したいという連絡が全国古民家活用推進協会のほうにありました。そこで、地域おこしのプロジェクトを組みました。施設改修のハード事業を行う業者と、市がかかわる人材育成のソフト事業があり分かれています。

    自治体が空き家にならない対策として、住教育に力を入れているところもありますよね。先日私は、空き家アドバイザーという資格を受けに行ったのですが、そのときの教科書に「仏壇とは何か」「仏壇の処理の仕方」「空き家になる前に物を片づけ始めましょう」などと書いていました。それ以上のことは書いていなくて、そこは地域の特色もあるので小樽としては個別に考えるべきかと思います。

    酒井氏/小樽も空き家問題にとり組み、バンク活動もしていますが、古民家など古い建物と一般の建物の流通をネットワークしなくてはいけないですね。

    五十嶺氏/不動産業者としての立場から、空き家問題にとり組もうとしてもそれは無理なのです。不動産業は儲けがないと動かないのが世の常で、そこには利益が発生しませんから。ただ私は、半分は公的な立場に身を置いていることもあり、自治体と小樽市内の不動産業者をつなぐ連携システムの構築ができる立ち位置にはいるので、そこを今後何とかしたいとは強く思っています。

    古民家の物件数が、流通面で少ないのは、所有者が特定されていない物件がけっこうあるからだと聞いています。あとは相続問題でもめているとか、相続人のうちの1人が行方不明になっているとかで、その権利を第3者に譲渡するところまでに至らないケースがあります。これは国のほうでも問題視していて、所有者不明の物件に関しては公共性のある事業所が認可を受ければ使えるという法律も整備されてきました。

    私たち協会のほうでも古民家専門のHPをつくって全国の古民家を見ることができるようになっています。確かにそこにのっている物件は少ないです。北海道では今1軒だけです。

    街並みと建物が一体になり小樽の魅力を形成する

    酒井氏/小樽の街の魅力はいろいろありますが、宿泊施設を運営する側が街のコンテンツの掘り起こし、もう少し小樽の観光エリアを広くとらえる必要があると思いますか?

    河嶋氏/そうですね。まわりから「小樽って、泊まる場所なの?」とよく聞かれます。定番は、運河を見て、栄町商店街で海産物食べて駅に行って帰るコースです。日帰り観光のイメージが強いかもしれませんね。宿泊事業者として小樽は泊まりで行く場所、というイメージをどうやって発信できるかが課題です。個人の小さなお店がたくさんあって、若い人が増えている注目の色内エリアの魅力や祝津、余市や二木、積丹まで広い観光エリアをアピールしていかないと、小樽での宿泊が増えないのではないかと思います。1泊、2泊することで経済効果も違うと思うので、さらにいろいろな連携を進めていかなければと思っています。

    酒井氏/岡川薬局では、ワーキングステイというシステムを取り入れていますよね?

    福島氏/小樽だとバックパッカーズホテル「杜の木」さんが、古くから労働の対価として宿泊を無料にするシステムをとり入れていますよね。ビザの件さえきちんとしていれば、中長期で滞在したい人は使えるシステムだと思います。外から来た人同士が仲間になれるメリットはありますし、街としても血液循環がよくなると思います。

    利用する人は、長期の休みをとって都会から来る女性が多いですね。癒しというかいいリフレッシュになるのでしょうね。

    酒井氏/小樽の物件を、海外の人が購入している例はあるのでしょうか?

    福島氏/知っている限りだと「ホテルノイシュロス」は香港の投資家が買い、駅前の「ドーミーイン」の区分所有もしていますし、今度リニューアルオープンする「旧越中屋ホテル」も、同じ香港の投資家が買収しました。最近、色内にオープンした「石蔵カフェ~石と鉄」は、表向きは札幌の不動産会社がやっていますが、もう30年くらい日本で仕事をしている香港の投資家が手掛けているものです。私が知っている香港の人たちはお金儲けというよりも、小樽が好きで街をよくしていきたいという人たちですね。

    酒井氏/札幌と小樽で開業すると、その違いを感じることはありますか?

    河嶋氏/小樽は民泊やホテルは増えているので、建物を活用したいという人は増えていると思います。札幌で宿をやっていると感じるのが、観光案内がしづらいと思うことがありますね。お客さんに、観光のおすすめを聞かれるとことが多いのですが、どうしても飲食に偏ります。観光見物となるとテレビ塔か道庁くらいで、あとはモエレ沼など郊外になってしまいます。小樽は街そのものがひとつの観光テーマパークみたいで、歩くだけで楽しめます。札幌はあまりコンパクトではないのに比べ、小樽はきゅっとコンパクトで輪郭がはっきりしていると感じます。

    酒井氏/街並みが魅力を持っていて、裏路地の生活があって一般の住宅がかもし出すもの、その両方あるのが小樽ですよね。札幌にはないものが小樽にはあります。

    【質問コーナー】

    Aさん/河嶋さんにお伺いします。ゲストハウスは民泊とどう違うのでしょうか?

    河嶋氏/はい、違います。そもそも民泊というのは昨年の6月に民泊新法(住宅宿泊法)ができまして、住んでいる場所を宿泊施設として開放して泊まってもらうというもので、民泊支援法で申請を出して年間180日間しか運営できないという縛りがあります。

    一方でゲストハウスは、旅館業法の簡易宿所もしくは旅館として365日営業しています。何がわかりづらいというとゲストハウスという法律的な登録はないのです。旅館業法の中ではどう呼んでも自由です。ペンションとか。そこが民泊との違いです。

    Bさん/リノベーションにあたって耐震上の問題などはないのでしょうか?

    福島氏/基本的には専門家が見てもらうのが、やはり信ぴょう性が高いと思います。とくに木造だと不思議な力関係で建っていることがあるので。住宅の規模だと必要な補強をするだけでよいのですが、大きなホテルなどの場合、運営する会社や所有者が一部上場企業だと、会社の信用上、耐震診断をして結果により補強を行います。さきほどの旧越中屋ホテルだと、耐震診断だけで2000~3000万はかかるのですが、そのうえで耐震補強をするとなると収支など合わないわけです。ある程度、そのあたりはコンプライアンス上なのか、別な形でうまく仕組みなど補強をして何とかやっていくというのが現状です。そうしないと事業収支自体が破綻することになるので。

    Cさん/古い建物の売買で注意すべきことはありますか。加えて、小樽でどんどん古民家が壊されています。移築など一般の人が守る活動に参加できないのでしょうか。

    五十嶺氏/売買で注意すべきことは、買うときに見たほうがよいのは基礎です。柱の下が腐食していたり、北海道で意外ですが白アリに喰われていることもあります。あとは、柱などを水平器で見ることですね。

    全国的な話で言うと、古民家を守るための不動産のオーナーズクラブ「結プロジェクト」をつくっています。古民家に限定して出資をつのり、リノベーションをかける仕組みです。ほかにクラウドファンディングで資金をつのり、リフォーム工事を安くしましょうという活動など全国ではいろいろなことを考えてやっていますが、小樽ではまだ実行されていないですね。協会では札幌で月に1度、例会をやっていますのでまずはそこから参加してみてください。

    Dさん/建物をセルフリノベーションする場合、どの程度、自分でできるものでしょうか?

    河嶋氏/ 塗装と壁貼りくらいは自分でできると思います。2店舗目をつくるときは私もそれくらいしかできなくて、塗装といっても種類が限られます。壁の間仕切り、天井を貼るなどは大工さんに依頼し、設備関係は手配を工務店にお願いし、プロの方にやってもらったほうがいいです。大工さんもいろいろで、空間デザインやお客さんの動線まで考えてくれる人もいるので、自分でやる場合は、相談できるような職人さんを選ぶとよいですね。

    Eさん/小樽での民泊の将来性をお聞きしたいです。

    河嶋氏/宿泊施設をつくれば、人が泊まりに来るんじゃないのかという幻想があり、バブル的な雰囲気があるんじゃないかと感じます。海外から人がたくさん来て宿泊も増えているのではないか、だから民泊をやるというのはありですが、その大金を投資するのかどうかと貸す側は、慎重になったほうがよいと思います。

    そして、今私が思っていることは、宿泊施設としてどう差別化していくかということです。ポイントはひたすらみんなが面倒くさいと思うことをやっていくことしかないと思っています。民泊でもすでに、人件費の削減として無人でチェックインができるところもあります。その流れが来るとは思いますが、一方で人と会話をしたい人もいるでしょうし、サービスはなくならないと思います。時代が効率化やITへ向かえば向かうほど、私たちは有利かなと思っています。

    福島氏/私は(社)空き家・空き室対策協議会小樽支部という肩書もありまして、そのあたりも詳しいのですが、民泊の規制緩和としてはちょっと空振りなので、今後変わってくると思います、現状だとオーナーが住んでいる形でなければ、消防設備がほぼ簡易宿泊所と同じものを求められるので、だとしたらあえて民泊をやる必要性もないです。

    たぶん河嶋さんのところは、施設にコミュニティや温かさがあるから、継続して愛される場所をつくれていると思います。私も実は「小樽アパートメント」というものをスタートしようとしていて、旅行者と小樽に滞在する人とはっきり区別しないほうが正しいだろうという考え方です。小樽らしい空間を活かして街の魅力、温かい空間とかコミュニティづくりで街をどんどんよくしていく、という選択しかないと思っています。

    五十嶺氏/空き家の話しでいうと、これだけ空き家が多くなっているので、私の中では「2地域居住」というのがキーワードになっていて、夏は涼しい小樽で過ごしてもらい、ほかの季節は地元で住んでもらうという方法があるなと思っています。それだけで空き家が半減するのではないかと。空いている間の管理はシルバー人材センターさんとかにお願いすれば、雇用も生まれるのではないかと思っています。

    酒井氏/3名のパネラーの方に拍手をお願いいたします。今日はありがとうございました。

  • [2018年2月12日 開催] 「あなたはどうする?」空き家・空き店舗 活用セミナー&個別相談会終 了

    空き家・空き店舗活用セミナー&個別相談会
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  • [2017年12月9日 開催] 「古い建物の改修方法を知ろう」講演&ワークショップ終 了

    「古い建物の改修方法を知ろう」講演&ワークショップ
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    「古い建物の改修方法を知ろう」講演&ワークショップの様子
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    「古い建物の改修方法を知ろう」講演&ワークショップの様子
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  • [2017年11月17日〜11月18日・全4回 開催] リノベーション活用事例見学ツアー終 了

    リノベーション活用事例見学ツアー
    リノベーション活用事例見学ツアー申込書

    講座の様子

    リノベーション活用事例見学ツアーの様子
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    リノベーション活用事例見学ツアーの様子
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